株式会社ユニリタ ビジネスイノベーション事業部 部長代理 尾上雄馬
ー 自己紹介をお願い致します。
2007年株式会社ビーエスピー(現:株式会社ユニリタ)に入社し、ITサービス向けヘルプデスク支援ツール「LMIS」の事業立上初期から開発を担当する。
顧客の声をプロダクトに反映するために顧客サポートを兼務していたが、解約率の高まりに危機感を覚え、2017年より同サービスのカスタマーサクセスチームを立ち上げ責任者を担当。
カスタマーサクセス管理用のツールを内製し、3年で年次解約率10%→3%を実現する。この管理ツールを汎用化し、Salesforceプラットフォーム上で稼働するカスタマーサクセスツール「Growwwing」として販売開始、2020年7月より事業化し事業責任者を担当。
特定非営利活動法人「itSMF Japan」においてクラウドSLA分科会副座長、サービスカタログ分科会座長も歴任する。
ー 貴社の事業概要を教えてください
当社は、もともと情報システム部門向けにデータ活用およびシステム運用に関する「自社開発プロダクト」を組み込んだシステム構築・運用自動化のソリューションを提供している企業です。大型汎用機の時代から、ITの力を駆使して社会/事業/IT課題の解決に向けてチャレンジと進化を続ける企業です。
このような事業からスタートした会社ではありますが、時代背景や移り変わるビジネスニーズに対応し、顧客のビジネス成功に伴走するため、ビジネスモデルの変革と、事業部門といった従来の情報システム部門以外に向けたクラウドサービスの展開も行っています。そのような変革の中、当事業部では、新規事業として生まれた「Growwwing」というサービスを、カスタマーサクセス担当者に使っていただくためのツールとして開発・販売しています。
ー カスタマーサクセスをやるに至った背景を教えてください
元々、LMISというSalesforceのプラットフォーム上で稼働するIT部門向けのヘルプデスクSaaSを担当していました。
当初は開発だったのですが、顧客数が増加していくのと合わせて解約も増えてきていました。当時は、サポート専任チームというのが存在しなかったので、それを立ち上げることにしました。
それのチームを立ち上げる際にカスタマーサクセスという考え方を知り、折角やるのであれば従来のカスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスのチームを作ろうと思い活動に取り組み始めたということになります。
ー 苦労したところはどんな点でしょうか?
1つ目は、現状の可視化が出来ておらず、次の打ち手を計画出来ないという課題がありました。
もともと当社のビジネスはサブスクリプションではなかったので、ARRやLTV、解約率といった数値が可視化されていませんでした。
また、どのお客様がうまくサービスを活用できていないのかということもわからないという状態でした。
案件や契約の管理にはSalesforceを導入していたのですが、Salesforceに登録されている情報だけでは充分に可視化出来ないという問題もありました。
もともと開発なので、LMISをベースにサブスクリプションビジネスの契約周りを管理できるように改修し、ARRやLTV、解約率を可視化できるようにしました。その後、解約原因・傾向の分析をして、解約のリスクが高いお客様に対して優先的に対応を行うことで当時の年次解約率10%から3%に大幅低減することが出来ました。
これがいま私が担当しているカスタマーサクセスプラットフォーム「Growwwing」のプロトタイプになっています。
ー CS活動を実施する中で、自社用にCS活動に必要な機能を開発したのが「Growwwing」だったのですね。他に苦労した点はありますか?
2つ目は、組織内におけるCS文化の醸成です。
そもそも当社の管理会計上の数字がサブスクリプション指向ではないため、解約率の低減が如何にビジネスに貢献するのかというようなことを経営に理解してもらうために経営が分かる用語や数字に置き換えることで理解してもらえるようにしました。
また、メンバーにもカスタマーサクセスが如何に大事なのか、どういう考え方にならなければならないのか、それはなぜかというのを月次の部会などで繰り返し話をし、浸透を図るように活動していきました。
ー 「Growwwing」の機能や特徴を教えてください。
「Growwwing」は、サブスクリプションビジネスにおける「LTVの最大化」に向けたカスタマーサクセス活動を管理・支援するプラットフォームです。Salesforceプラットフォーム上で動くサービスですが、顧客がSalesforce製品を利用していない状態でも、「Growwwing」単体で購入・利用することができます。
また、「Sales Cloud」などのアプリケーションと組み合わせることで、顧客情報をシームレスにつなげることが可能です。そのため、「マーケティング → セールス → カスタマーサクセス」の流れを一気通貫で管理することが実現でき、質の高いCXを顧客に提供することが可能となります。
例えば、日々のカスタマーサクセス業務で「お客様に対して問い合わせ対応をしました」といったデータを収集したり、お客様が使っているツールから利用データを収集し、その顧客データに対して「このようなアクションを取りましょう」という次の行動を指示してくれる機能が入っていたりします。
ー 現在どのようなカスタマーサクセス活動をされていますか?
当社はOn-Boarding、Adoption、Growthの3つのフェーズでカスタマーサクセスジャーニーを管理しています。立ち上げ初期なので、現在ハイタッチメインの対応をしている中で顧客からの問い合わせや要望などの意見を収集し、各フェーズのドキュメント品質向上や機能アップグレードに向けて日々改善活動をしています。
改善を継続していく中で、顧客の成功をより早く実現できるよう多くの施策を実行しています。例えば、プロダクトの活用状況や問い合わせ履歴に合わせて、適切なタイミングでアプローチをしています。お客様の体制や業務プロセスが変わった場合などでも、各顧客の業務プロセスに応じて、ここの部分なら「Growwwing」を利用すれば効率化できるなど、顧客の変化にすぐ対応することができます。
ー 現時点の課題を教えてください
定量・定性的な情報を元にデータドリブンのPDCAをうまく回せていない点が課題です。ハイタッチメインの対応なので業務改善施策に工数が当てられていないのが現状です。とはいっても、日々のCS活動で得たお客様からの貴重な意見を蓄積することはできているので、徐々にプロダクトや各種資料に反映中です。また、ログイン状況やアンケート結果からスコアの計算をして「Growwwing」のタスク自動生成機能を利用し、業務効率化を進めている最中です。
ー 今後の取り組みについて教えてくださ
「Growwwing」はこれから活用フェーズに入っていこうとしています。活用が進んでいく中で、お客様からさまざまなご要望が発生してくると思いますので、改善のプロセスを社内で回し、「Growwwing」自体のカスタマーサクセスを実現し、サービスの品質をさらに向上していきたいと考えています。
今では各社からさまざまなカスタマーサクセスツールがリリースされていますが、ツールごとに得意とする部分も異なると思います。そこで他社ツールの利用状況データとの連携を強化していくことで、カスタマーサクセスのエコシステムを構築していきたいと思っています。
また、CS業界の活性化や「Growwwing」を通して導入パートナー様、その先のサービス利用者の顧客体験価値の最大化を目指すことで、『三方よし』の実現にも貢献したいと考えています。
ー 最後に一言お願いします。
サブスクリプションというビジネスモデルにおいてカスタマーサクセスが重要と言われていますが、モノ消費がシュリンクしていく日本市場においてはあらゆる企業・サービスがカスタマーサクセスに本気で取り組まざるを得ないと考えています。
これからのビジネスでは、お客様をどれくらい深く理解し、ニーズ・シーズを的確に把握し、価値を継続的に提供していくかということが最重要課題になっていくと思います。
いまはまだ多くの企業はやり方を模索しているという状況だと感じますが、過去にWabマーケティングが企業に定着していったのと同じように、今後あらゆる企業で必須の活動として浸透していくと考えています。
LTVを最大化するためのカスタマーサクセスプラットフォーム「Growwwing」
会社情報
会社名 | 株式会社ユニリタ |
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本社所在地 | 〒108-6029 東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟 |
設立年月日 | 1982年5月24日 |
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主な事業内容 |
IT領域における「データマネジメント」「サービスマネジント」「プロセスマネジメント」の強みを活かし、デジタル社会でのビジネス貢献と業務効率化や生産性向上を実現するための製品とサービスを提供しています。そして、サステナブルな社会基盤を支えるお客様のDXを支援するため、IT課題、事業課題、さらには社会課題をデジタル技術で解決すべく事業の拡大を図っています。 |